
ドコドン、ドコドンと太鼓の音が響く。
小学生の息子が、地域の太鼓の練習に参加した。
初めてのバチを握る小さな手。
それを、年配の師匠たちが優しく包み込むようにして教えてくれる。
「こうやって打つんだよ。」言葉だけじゃない。
その手の動き、その目の光、背中で語る生きざま。
まさしく口伝。
大人たちは知っている。
この太鼓の音が、ただの「ドコドン」ではないことを。
この音には、秩父の風、川のせせらぎ、先人たちの想いが込められていることを。
だからこそ、子どもたちに伝えなければならない。
未来に、この音が消えないように。
故郷とは何か?
子どもたちは、今はまだ分からないかもしれない。
でも、遠くへ羽ばたいたとき、ふとした瞬間に思い出すはずだ。
幼いころに触れた太鼓の音、手を取ってくれた大人たちの温もり。
それが、心のどこかで「帰る場所」となる。
人口が減る、町が寂れる、文化が途絶える——そんな未来をただ指をくわえて見ているわけにはいかない。
だから、大人たちはがんばる。
太鼓を打ち鳴らし、子どもたちの手を取り、伝統をつなぐ。
これは、ただの太鼓じゃない。
これは、魂を伝える音。
その音が、いつか彼らを故郷へと導いてくれることを信じて。
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